大伝馬町で台頭した伊勢の人
江戸の日本橋界隈を席巻した豪商は近江商人と並んで多かったのが伊勢商人だそうです。「小津和紙」の創業者・清左衛門長弘も伊勢松坂の出身でした。承応二年(1653年)、長弘が江戸大伝馬町(現在の小津和紙の地)に紙商を開業以来、360余年。紙と小津にまつわる歴史を展示公開しているのが『小津史料館』です。創業者がなぜこの地で店を開いたのか。店の印がどのようにして「ウロコキュウ」と呼ばれる「△に久」のマークになったのか。さらに江戸時代の町の様子など、小津の足跡を辿ると社会の変化も見えてきます。現在までに、東京都中央区登録有形文化財として保存指定の古文書2,000余点のうち、約1,000点の史料を順次公開しています。場所はJR総武本線新日本橋駅から徒歩2分。小津史料館は昭和通りに面して建つ大きな小津本館ビルの3階です。
現代にも通じる商いの「掟書」も
館内では館長の松浦節也さんの懇切丁寧な説明を受けることができました。「いつも展示館に詰めているので、何かご質問があればどんどんお訪ねください」とのことなので、入場の際はぜひ館長とのお話をお薦めします。
史料館には創業者が店員の心得を定めた七カ条の掟書が展示されていました。「夜遊びはいけないとか、保証人になるなとか。現代にも通じる基本的なことが書いてあります。もともと小津清左衛門長弘は働き者で篤実な人だったと言われています。伊勢商人は、本来松阪木綿の扱いで頭角を現しましたが、長弘は紙問屋に奉公していて店主から信頼を得て店を譲り受けたんです。そして生活全般に必要とされた紙需要の急速な増大というニーズを掴んだのでしょう」
人は紙をつくり紙は文化をつくる
江戸時代の大伝馬町界隈の賑わいが分かる歌川広重の「東都大伝馬街繁栄之図」も展示されていますが、絵には同店がしっかり描かれています。また小津家にゆかりのある本居宣長の肖像画やかつて使用されていた千両箱なども目を引きます。
また、小津和紙本館の2階の「小津ギャラリー」では、期間ごとに変わる展覧会を自由に見学できます。1階は和紙の店舗とともに「手漉き和紙体験工房」があり、手漉き和紙の制作体験・工程の実演を行っていて、完成した和紙は当日持ち帰りできるとのこと。工房には「人は紙をつくり紙は文化をつくる」の文字が黒々と張り紙してあり、この館を象徴しているようで印象的でした。
お話を伺った方
館長松浦 節也さん
■展示館インフォメーション | ||||
小津史料館管理者:株式会社小津商店(平成23年度認定) | ||||
住所 | 東京都中央区日本橋本町3-6-2 小津本館ビル地図 |
開館日 | 月〜土曜日(年末年始等を除く) | |
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電話 | 03-3662-1184 | 開館時間 | 10:00〜18:00 | |
HP | https://www.ozuwashi.net/ | 最寄り駅 | 新日本橋駅5番出口 徒歩2分 小伝馬町駅3番出口 徒歩5分 三越前駅A5番出口 徒歩7分 |